「子どもたちに迷惑はかけたくない…」そんな思いとは裏腹に、相続した土地が「負の遺産」となってしまうケースが増えています 。かつては貴重な財産だった土地も、今では管理に手間や費用がかかる悩みの種になることも少なくありません。
1、不動産に関する統計
2、『相続した土地』に関する事例
3、これからできる2つ+1の方法
【1、不動産に関する統計】
所有者不明土地の増加:
日本全国の所有者不明土地は、面積にして約410万ha 。これは九州の面積よりも大きいサイズです 。
土地の価値観の変化:
昭和の時代、土地は「代々受け継ぐべき財産」でした 。しかし現代では、人口減少などを背景に「負動産」と言われる土地が増加しています 。
管理への負担:
土地を相続した人のうち、55.6%が管理に負担を感じたことがあると回答しています 。また、半数以上の51.4%が「手放したい」と考えているというデータもあります 。
【2、『相続した土地』に関する事例】
1.売却できた事例
<被相続人>父 <相続人>長男・次男
自宅土地・建物を相続しました。建物は築50年を過ぎて雨漏りもする状態。不動産事業者のアドバイスもあり、建物を数百万円の費用で解体。
隣地の会社に声をかけたら、購入してくれることに。会社は駐車場として使用したいとのこと。
解体費用と売却代金で、赤字になることなく手放すことができました。
2.子供のいない叔母の自宅・農地5筆
<被相続人>叔母 <相続人>甥・姪6名
一人暮らしだった叔母が死亡。おばの自宅はなんとかなりそうですが、農地があり困っています。
私達は農家でないし、持っているだけで負担がありそうで困っています。
<現状>自宅は売却。農地は、近隣農家の高齢化もあり、無償でも引き取り手がいない。このため、甥姪は負担を嫌い、農地の相続登記も終わっていない。農地は、草が伸び放題で放置されている。
3.処分費用を支払って事業者に引き取ってもらった
<被相続人>母 <相続人>長女・長男・二女
昭和の頃に買った分譲地が、利用されることなく更地の状態。現在は、草だけでなく樹木もある状態で、手が付けられない。複数の不動産事業者に相談したが、断られてしまった。
70万円を支払うことで不動産事業者に引き取って貰うことができた。
【3、これからできる2つ+1の方法】
建物であれば「解体」で問題を解決することができますが、
土地は、2つの方法しかないところが難しいところです。
1.誰かに託す「譲渡」(売る・贈与する・費用を支払って渡す)
譲渡する相手を見つけて(事業者に見つけてもらって)、手放す方法です。
メリット:現金化できる(売る場合)
デメリット:譲渡相手を見つける必要がある、費用負担が必要
2.国へ帰す「相続土地国庫帰属制度」
条件が揃えば国へ帰すことができます。
メリット:国が引き取るので安心、条件さえ揃えば手放すことができる
デメリット:負担金(1筆20万円~)、申請負担が大きい
※施行後、5年を経過した時点での見直しがあります
+1(番外編)すべてを放棄する「相続放棄」
相続をする前(親が亡くなった後、3カ月以内)であれば、相続放棄をすることで、
土地を相続することがありません。
ただし、必要な遺産(例えば、預金、株式等)も相続することができません。
